熊本地震の検索データから見えた課題を解決するにはどんな方法が考えられるのでしょうか。大学生や社会人など約30人とワークショップで話し合ってみました。

【最優秀賞】 避難所情報のリアルタイム共有システム

 熊本地震の際に検索された単語のうち、参加者の多くが注目したのが「避難」というキーワードでした。地震発生直後は「ガス」や「水道」といったインフラ情報より先に、まずは「命を守るための情報」を被災者が求めていたことがうかがえます。

 また、検索ワードの関連性を分析したグラフを詳しく見てみると、一概に「避難に関する情報」といっても置かれている境遇によって求める情報が異なることも分かってきました。

検索ワードのつながりを示す図(Yahoo!ニュース作成)。線の結びつきは、共に検索されている頻度が高いことを示しています。

 このチームはこの情報から、以下の仮説を立てました。

 「熊本市など大都市圏は、『避難所』が『場所』に関する言葉と強い関係で結びついている一方で、益城町など郊外では『役場』といった単語が出てきている。つまり、海外の人や県外出身者も多い大都市圏では避難所の場所が分からず困った人が多い一方で、地元出身者が多く避難所の場所は把握している人が多い郊外では、むしろその避難所の開設状況などを自治体に求めた人が多かったのではないか」

 そこから「リアルタイムに避難所の開設状況が分かり、そこまでの安全な避難ルートが分かる仕組み」が災害直後には必要とされているとして、そのためのシステムを提案しました。

避難所情報のリアルタイム発信システム
・各地の体育館などに予め押すだけで避難所開設を発信できるボタンを設置
・地震発生時は避難所を開設した行政職員がそのボタンを押す
・クラウド上の防災システムに避難所の開設情報を集約
・Jアラートなどで避難所の場所や安全なルートを発信
・支援物資の状況などを職員が「青、黄色、赤」の信号で発信できる仕組みも用意
・情報をクラウド上に集約することでスムーズな支援を可能にする

避難所情報のリアルタイム発信システムのイメージ

 こだわったのは情報の正確性と、手軽さでした。このチームには自治体職員も参加していました。災害発生時には、システムを簡単に使えることが何よりも重要だと話します。

 「田舎の避難所では職員はせいぜい1人や2人。あの混乱の中では文字情報を入力することすら負担です。だからボタン一つで使えるシステムであることがとても重要なんです。加えてこれは行政が入れる仕組みですから情報の正確性も担保できます」

 正確な情報を簡単に一つのクラウド上に集約していくという点が評価され、最優秀賞を受賞しました。

【優秀賞】 検索データと自身の経験、重ねあわせて見えた防災対策

自身の被災経験を話す参加者たち

 一方でユーザーが発信する情報を避難行動に生かせないか考え、優秀賞を受賞したチームが2つありました。

 熊本地震の際に避難所マップを作成したプログラマーを擁するチームには、知りたい情報が一つにまとまっていないという問題意識がありました。

 「検索データから分かるのは皆がバラバラに同じ単語を調べているということ。検索することすら負担だと思うので検索することなく、必要な情報がひと目でキャッチできる機能が必要だ」。そう考え、支援物資の在庫状況をお店の店主や利用客が投稿し、それを地図上にポップアップで表示する機能や、避難所に「チェックイン」できる機能を導入し、大切な人の安否やいまどこにいるのかが、ひと目でわかるサービスを提案しました。

 また大分で被災した大学生らのチームは、当時の経験ももとに考えました。提案したのは、ユーザーが位置情報付きで投稿した写真が地図上に反映され、安全な避難ルートが分かるサービスです。

 「検索データを見ると『デマ』と思われる情報の真偽を確かめるキーワードが多かった。実際に当時、崩落した建物、土砂の情報など避難者が安全に避難するために必要な情報を正確に知りたいと思っていた。大学には留学生も多く日本語を読めない人もいるので、地図にマークするという設計を考えた」。

【優秀賞】 「日常の生活の延長線上」で考える防災機能

アイデアを1枚の紙にまとめる

 ワークショップの中で参加者が口々に話していたのが、「災害時に、その重要性に気づくサービスやアプリを、災害が起きる前からダウンロードしてもらうのは難しい」ということ。「平時から使ってもらえるサービスが、災害時には災害モードになる」というのが重要だと考えたチームが複数ありました。

 なかでも「Yahoo!天気災害マッシュアップ」というアプリを提案したチームは、3チームめの優秀賞を受賞しました。通常のアプリが、緊急地震速報と同時に災害モードに変わり、位置情報を基にした避難情報を提供したり、停電などに備え、スマートフォンが節電モードに自動で切り替わるという機能です。さらにこのチームの提案の特徴は、表示される情報が発災直後の避難情報だけでなく、その後も被災者のニーズに合わせて表示されるというものです。

 チームには災害時の情報発信を研究しているメンバーがいました。「被災者が求める情報のニーズがこう変わるという経験値がたまっている。位置情報を基に、被災者が次に求める情報を予測して表示できる」と話していました。

 この他にも以下の様なアイデアが生まれました。

その他の生まれたアイデア

アイデアを出しあう参加者たち

ラーメン保険
検索データや、東日本大震災での被災経験から、「避難所には『安全』は確保されていても『安心』がない」と考えたチームが提案した、避難所に温かい食事を提供できる仕組み。
Yahoo! Recommend
検索データから被災時に求める情報は、その人の属性や境遇によって異なると考えたチームが提案した、災害時の情報レコメンデーション機能。
僕らの防災MAP
スマートフォンのキャッシュ機能を活用し、災害時にネットが使えなくなっても最低限の避難情報が閲覧できる仕組み。

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